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サイレントクリスマス

エッセイ

孤独をかみしめた夜

コンビニの白い袋が、
夜風にかすかに鳴った。
バイト終わりの指先はまだ冷たくて、
売れ残りのケーキの箱が
やけに軽く感じる。
「こんなはずじゃなかったのになあ」
そうつぶやいた声は、
都会のビルの隙間に吸い込まれていく。
駅前のイルミネーションは
誰かの幸せを祝うために光っているのに、
私の影だけは、
その光に馴染めないまま伸びていく。
ワンルームの部屋に戻ると、
暖房の音がやけに大きい。
コンビニ弁当のフィルムをはがす音が
ひとりきりのクリスマスを
さらに強調する。
ケーキをワインで流し込みながら、
スマホの時計を見て、
ああ、もうすぐ日付が変わるんだと気づく。
YouTubeの画面には、
知らない誰かの笑い声。
その明るさに救われるようで、
でも、どこか遠い。
画面の向こうの世界は、
私の孤独に触れないまま
ただ流れていく。
ふと、故郷の家族の顔が浮かぶ。
こたつの上のミカン、
母の作るクリスマスのチキン、
父の少し不器用な笑い声。
あの温度を思い出すたび、
胸の奥がじんわりと痛む。
でも、ここにいるのは私だ。
この都会の片隅で、
誰にも頼らず、
誰にも見つからず、
自由という名の孤独を
かみしめている。
むなしい夜だ。
だけど、
このむなしさの中でしか
見えない景色がある。
売れ残りのケーキの甘さが、
少しだけ涙を誘う。
それでも私は、
この夜を選んだ自分を
どこかで肯定したいと思っている。
クリスマスの灯りが遠くで瞬く。
その光に背を向けながら、
私はひとり、
静かにワインを飲み干した。

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